利用者は「部屋」を使いたい。運営者は二の次

レンタルサロンを使ってくださる方は、施術や仕事のための空間がほしくて来ます。
きれいで、静かで、予約した時間に確実に使える。求められているのは基本的にそれだけで、運営している自分の人柄や存在感のようなものは、正直に言うと二の次です。

サービス業をやっていると、つい自分の色を出したくなります。自分という存在を覚えてもらいたくなる。自分も最初はそうでした。
でも、よく考えると、利用者の方は自分と仲良くなりに来ているわけではありません。仕事をしに来ているのです。そこに運営者の存在感を足すのは、相手のためではなく、自分の承認欲求のためだったのだと思います。

この順番を取り違えると、サービスはどんどんお節介になっていきます。求められていない気遣いは、相手にとっては余計な気疲れになることもあります。

良い運営とは、自分を消しても部屋が回ること

そう気づいてから、運営の目標が変わりました。
自分が前に出ることではなく、自分がいなくても部屋がきちんと回っている状態を作ること。それを目指すようになりました。

連絡しなくても予約が取れる。初めてでも迷わず入れる。何かを自分に確認しなくても、滞りなく使い終えられる。利用者の方が自分の存在を意識しなくて済むほど、運営はうまくいっているということです。

以前のコラムで、体を痛めて動けなかった時期もサロンの売上が止まらなかった、という話を書きました。あのとき回っていたのも、結局これと同じことだったのだと思います。
自分が消えても困らない形になっていたから、自分が動けなくなっても止まらなかった。

主役は空間。運営者は黒子でいい

自分の存在感を消すというのは、手を抜くことではありません。むしろ逆で、相手が何も気にせず使える状態を保つために、見えないところを整え続ける仕事です。

黒子に徹するほど、舞台はきれいに回ります。サービスの良さは、自分が目立つことではなく、相手が自分を忘れていられることに出るのだと思います。

「自分が消えても回る」は、労働に頼らない仕組みそのもの

自分が主役になりたい気持ちを手放したら、事業はむしろ強くなりました。
自分の労働や存在に依存していないということは、自分が抜けても続くということです。これはずっと自分が目指してきた「労働に頼らない仕組みづくり」の、いちばん分かりやすい形でした。

前に出ないと決めてから、できることが増えたという話も以前に書きました。レンタルサロンの運営は、それを別の角度から教えてくれたのだと思います。
前に出ないことも、自分を消すことも、どこかでつながっています。自分の存在を引き算していくほど、仕組みのほうが前に出てくる。

自分が要らなくなるほど、仕組みは強い

「自分にしかできない」を増やすと、その人が倒れた瞬間に止まります。「自分がいなくても回る」を増やすと、止まりにくくなります。

自分の存在価値を、目立つことではなく、抜けても回る設計のほうに置く。レンタルサロンは、それを静かに教えてくれました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。