なぜ動けない自分でも、予約が入り続けたのか
まず、当時の自分の状態を整理します。
右膝の靱帯と半月板の手術直後で、自宅内の移動もままならない。
外出は妻の運転でリハビリに行くか、車椅子で動くのが精いっぱい。
仕事部屋に1人で移動するのも困難。
パソコンを開いてサロンの広告を回す気力もなければ、SNSで集客の投稿を書く余裕もない。
その状態で、Pierisには予約が入り続けていました。
誰が動かしていたのか。
自分が広告運用していたわけではない。
自分がSNSで集客していたわけでもない。
自分が予約電話に出ていたわけでもない。
では何が動いていたのか。
いま思い返すと、自分の労働を介さずに動いていたものが、いくつかありました。
それらを、ここから3つに分けて言葉にしていきます。
① 集客が「サロン側で完結する」設計だった
1つめは、集客の入口です。
HP、Googleビジネスプロフィール、予約システム。これらは僕が寝込んでいても24時間動いていました。
新規のお客さまは検索でHPにたどり着き、そのまま予約フォームから日時を確定する。
僕がメールを返したり電話をしたりする必要はありません。
一度来てくれたお客さまは、施術してくれたセラピストさんが自然にリピート化してくれます。次回予約の声かけも、LINEのやり取りも、セラピストさんと利用者さんの間で完結する。
つまり、集客の入口からリピートまでの動線が、僕を経由しない形になっていたのです。
「自動化」とは少し違う「仕組み化」
ここでよく勘違いされやすいのが、これは「自動化」ではないということです。
AIや高度なツールで人の作業を機械に置き換えた、という話ではありません。
HPもGoogleもセラピストさんも、それぞれが普通に動いている。
ただ、その動きが僕の労働時間を介さない並びになっていた。そういう設計です。
「自分が頑張らないと売上が立たない」を、「自分が頑張らなくても売上が立つ並びにしておく」に変える。それが集客側の仕組みでした。
② セラピストさんとの関係が「契約」ではなく「相互運用」
2つめは、人との関係性の設計です。
レンタルサロンPierisで施術してくださるセラピストさんたちは、僕が雇っているスタッフではありません。
それぞれが個人事業主として、自分のお客さまを持っています。サロンは場所と、その方の集客の補助を提供する側です。
これがどう効いてくるか。
セラピストさんは、自分のお客さまを連れて来てくれます。Pieris発で集客した新規のお客さまも、施術後はセラピストさんのリピーターになっていきます。
つまり、セラピストさんが動いている限り、サロンには人が出入りし続ける。
そして、ここが大事なのですが、僕の労働時間とセラピストさんの売上は直結していません。
僕が現場にいてもいなくても、セラピストさんは自分の技術でお客さまに価値を届けてくれる。サロンは場所代という形で、稼働した時間に応じて収益が立つ。
「雇う」と「仕組みを回す」は別物
「人を雇って自分の代わりに頑張ってもらう」のと、「人と一緒に仕組みを回す」のとは、形が似ているようで根本的に違います。
前者は、自分が抜けるとその人の生活も止まる。後者は、自分が抜けてもその人は自分の力で動き続けられる。
動けなくなった3ヵ月、僕の事業が止まらなかったのは、後者の関係を組んでいたからでした。
共同経営に近い構造、と言ってもいいかもしれません。お互いが独立して立っていて、場所と集客のレイヤーだけ重なり合っている関係です。
③ 物理空間が「稼働している間は売上が立つ在庫」
3つめは、空間そのものの捉え方です。
レンタルサロンは時間貸しのスペース業です。
1時間あたりいくら、半日いくら、という料金設定で、空間を時間で切り売りしている。
これは、空間そのものが在庫のような構造になります。
営業時間のうち、ブースが埋まっている時間は売上が立ちます。
埋まっていない時間は、ただ場所が空いているだけです。
大事なのは、その間に僕が現場にいる必要はないということ。
電気工事の仕事は、これとちょうど正反対の構造でした。
現場に自分が立っていない限り、1円も発生しない。自分の時間を切り売りする仕事です。
それに対してレンタルサロンは、自分の時間ではなくて、空間の稼働時間が収益源になっている。
労働時間ではなく、空間の稼働時間が売上を生む。
この違いが、動けない3ヵ月で痛いほどよく分かりました。
動けない自分が見た「仕組みの正体」
ここまで3つの設計を並べてきました。整理します。
- ① 集客の動線が、僕を経由しない設計になっていた。
- ② セラピストさんとの関係が、雇用ではなく相互運用になっていた。
- ③ 売上の源が、自分の労働時間ではなく空間の稼働時間になっていた。
この3つが連動していたから、僕が抜けても回り続けたのです。
1つだけでは弱い。3つが噛み合って初めて、自分の体調と事業の売上が切り離されました。
当時はこれを「ありがたい」の一言で済ませていました。
でも、いま分解してみると、これは意図的に作れる構造です。
同じ並びを、別の事業にも、他の経営者の事業にも、ある程度は移植できる気がしています。
これが、ケガから動けるようになった僕が、いま一番伝えたいことです。